第8話「Thunder Delve Mountain Retry (雷鳴山再び)」Vol.1【コンゴウ国・居住区】
■冒険の導入
奇跡と脅威に満ちた、ドワーフのサムライ王国-コンゴウ-は既にない。ただ輝かしい伝説だけが子供向けの童話として伝えられているだけである。失われた王国を受け継ぐはずの姫グローナは凶刃に倒れ、清涼な泉の底で静かに眠っている。最後のドワーフ王“国知らずの”ニムロンは絶望し、生き残ったわずかなゴールド・ドワーフたちと絶滅の時を待つのみである。
かつて雷鳴山の王を僭称していた“デス・アイ”バラックが、再び王座に就こうと仲間を連れて戻ってきている。謎の秘密結社TRINITYは、王国の神秘を利用しようと、彼らと共闘状態にある。その足元では、王国を滅ぼした危険な存在が目覚めようとしているのだ。
冷たい石の王国で邪悪な意志は絡み合い、その脅威がヴェラダインに届くまで、そう遠くないだろう。
マグマの川を越え、冷え切った溶鉱炉に火を灯し、絶滅寸前のゴールド・ドワーフ族を救えるのは、あなたたちだけだ!!
かつてのダンジョンに再び挑み、そこに潜む邪悪を退けろ!!
■参加キャラクター
(1) アノーリオン :半エルフ、男、クレリック4(ラサンダー) / ファイター3
(2) ウズサロ :半オーク、男、バーバリアン6 / フレンジード・バーサーカー1
(3) ”魔弾の” ザック :ノーム、男、ウィザード7
(4) ナイロ :エルフ、男、ローグ5 / レンジャー2
■冒険ログ
<ヴェラダインにて>
ネイロス要塞を攻略した冒険者たちの活躍は瞬く間に知れ渡り、彼らは英雄視されるようになっていた。評議員お抱え冒険者としても知られており、住人達からの信用度も高い。
彼らは旧ファブスター邸への居住権を得て、かつての使用人たちを再雇用した。ここにはいくつもの快適な部屋がある。
下水道に通じる地下室には、アレイニアのクロジンデが棲みついた。ここを気に入った彼女は、人間に化けて様々な本を集めだしている。知識欲の強い彼女は、様々な魔法的、錬金術的な実験の手伝いをしてくれるだろうし、彼女の知識が役立つ日がくるかもしれない。
ウズサロが訪れたテンパス神殿の練兵場は、冒険者達も利用可能だ。時に複数本の腕があるクリーチャーなどと戦う冒険者達の知る戦術は、兵士達にとって貴重な知識となる。ウズサロはそこで、これまで誰も引けなかった強弓を手に入れた。兵士達の羨望の眼差しを浴びながら。
ナイロは、下町で路上生活を送っていた二人の子供を助けた。大人を全く信用しない二人の心を開かせることに成功したナイロは、次世代の希望の光を得たのだった。彼らはまだ幼い子供ゆえに、冒険者達の行けない所にも人々の関心を引くことなく侵入できるだろうし、ヴェラダインの情報収集にも役立つだろう。
しかし冒険者達に許された安息日は僅かだった。
秘密結社TRINITYに拉致された評議員フェルディナン・ファブスターは行方知れずのままだ。やっと掴んだ手がかりは、使用人としてファブスター邸で働いていたTRINITYの構成員ハンス・ヨーウィーの行方だ。彼は無法者の”デス・アイ”バラックたちと手を組み、一ヶ月ほど前にコンゴウ国へと向かったらしい。
ラサンダーの最高司祭であり、ヴェラダイン評議員でもあるシュウ・ラケニスが、魔法的な宣託によってコンゴウ国地下に眠る魔獣フィルスネイカーの産卵、孵化、および雷鳴山の大噴火を預言した。
このままでは降灰によってヴェラダインの農業に甚大な被害が発生するばかりか、フィルスネイカーの成体たちがパルムフェンス地方のあちこちに現れるだろう。そして新たなる産卵場が作られ……将来的な被害の大きさは計り知れない!!
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<カシワイ谷のドワーフ小集落>
雪深い雷鳴山に、生き残ったわずかなドワーフが小さな集落を作って、なんとかその日暮らしを続けている。シュウからの支援物資を運ぶ役割も兼ねて、冒険者達は再び雷鳴山の雪に足跡を付けた。
集落にほど近い場所で、魔狼ウォーグに乗ったゴブリンを退けた冒険者達は、そこで懐かしい顔を見る事になった。かつての冒険仲間、カグヤ・スノーホワイトだ。ライカンスローピィに感染し、パーティーを離れた彼女は、エルフのシルゼ・エレノアと出会い、サムライ道を極めんとコンゴウ国を目指したのだ。今は変身を抑えるための修行とサムライの剣術を研鑽しつつ、ドワーフ達の用心棒として生活している。
ドワーフ集落で歓待された冒険者達は、コンゴウ国への入国許可をもらい、情報収集をした。
ドワーフ王ニムロンは、心を病んでいた。後継者であり、唯一の娘であるグローナを失ったことで衰え、かつての姿は見るべくもない。まだ活力が残っているドワーフから話を聞くと、
・かつて王女グローナは、強力なインテリジェンス・ソード(知性ある剣)、護国の宝剣ムネチカを探しに行った。
・深部へ至る扉は、鍵である宝珠(バラックが持つ)とドワーフ族(ドワーフの血)に反応する。
・扉の先には、サムライが途絶えた時のために”継承者の石”が設置されている。
・最深部には、魔法のアイテムを造り出す”ハーヴェイオンの炉”が設置されている。
・また深部には、飲料水や熱した鉄を冷やす水の供給源である守護者”水の精霊”が眠っている。
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<コンゴウ国へ至る道、王女の眠る泉>
冒険者達はダンジョンへ挑む前に、グローナ姫が眠る冷涼な泉を訪れた。ナンナというドワーフに、冬に咲く花スノー・ドロップを飾ることを頼まれたからでもある。彼女は姫の乳母であり、姫と共にコンゴウ国で倒れた女性ウィザード、ナラの母親である。
泉にはいつしかピクシーの”パーキーベル”が棲みついており、美しいまま眠るグローナ姫を守っていた。彼女と友好的な対面を果たした冒険者達は、
・コンゴウ国には、水の精霊シャルサイダーが眠っている。
・聖なる泉に錆びた鉄を投げ込むと、シャルサイダーが目覚める。
・滝の壁の水を黄金のひしゃくで飲むと体力が回復する。
などの情報を得た。
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<白竜の子孫たち>
カシワイ谷のドワーフ集落を悩ませるのは、寒冷や食料だけではなかった。雷鳴山にはかつてホワイト・ドラゴンの成竜が住んでおり、コンゴウ国のドワーフたちと激しい勢力争いをしていた。白竜セルシュトリオンはサムライの英雄によって倒されたが、その子孫たちは未だに雷鳴山を根城にしており、ドワーフたちの宝を狙っているのだ。
コンゴウ国へ向かう途中、冒険者たちは不幸にも、巣立ち間近で狩りの練習をしていたヤング・ホワイト・ドラゴンの標的となってしまう。ウェルシュトーラと呼ばれる幼竜は、巧妙な手口で冒険者たちを我慢強く、かつ執拗に攻撃してくる。多勢相手に決して地上戦を挑もうとせず、上空からのブレス攻撃で少しずつ弱らせていく作戦だ。
バーサーカーであるウズサロの狂乱(フレンジード)は、時に味方をも標的とする。死を求める狂戦士の斧から逃れようと冒険者たちが散り散りになったことで戦況が変わった。攻めあぐねたドラゴンの隙をついて、ザックの魔弾が、新雪の大地と白竜の鱗を鮮血に染めた。冒険者たちは見事にドラゴンを仕留め、巣立ちする途中だったドラゴンが持ち出した、大量の宝物を手に入れたのだった。
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<コンゴウ国 居住区>
冒険者達は、棺おけの中のように静まり返った冷たい石の王国へ、今回は隠し扉からではなく、正面扉から入国した。コンゴウ国初代の王ミフネを象った数十メートルもある巨大な石造は、国民がいなくなった今も、静かに訪問者をねめつけていた。
閉ざされた石扉の先の大通路は、広大さはそのままに埃と瓦礫、骸骨と煤だらけになっていた。冒険者たちは大通路に隣接する部屋を避け、かつて訪れ、そして帰ってこれなかった居住区へと進んだ。
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<コンゴウ国 ゴブリンの巣>
ゴブリンの巣となっていた大空洞は、扉を開ける前から喧騒の音が聞こえていた。地中から現れたレッド・ワームとゴブリンが交戦中だったのだ。そこに狂乱したウズサロが突貫し、みなは悲鳴が収まるまで待った。一匹だけ生け捕りにしたゴブリンは、血脂にまみれた狂戦士を見て、知りうる限りの情報を素直に話したのだった。
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<コンゴウ国 牢獄>
かつてグローナ姫たちが囚われていた牢獄は、バラック配下のサディスティックな女戦士イリアナと、今や彼女の愛剣となったインテリジェンス・ソード「レンダー」の遊技場となっていた。些細な失敗をした者をイリアナたちは、暇つぶしにいたぶっていたようだ。かろうじて生きていた人間の盗賊マルティンは、ナイロの説得によって寝返り、冒険者たちにさらに詳しい情報を渡した。ヴェラダインで独自の勢力を築こうと考えているナイロは、マルティンを仲間に加えて、ヴェラダインの邸宅へと送った。街で助けた子供たち同様、十分な見返りがあれば、マルティンはナイロの為に十分に働くだろう。
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<コンゴウ国 大通路の見張り小部屋と謁見の間>
冒険者たちは再び大広間に戻り、謁見の間と見張り部屋にいたオークとゴブリンに挑んだ。いたずらに騒ぎ立てるだけのゴブリンは別として、重戦士として人々から恐れられるオークだが、戦い慣れた冒険者たちは、大した策も弄せず、醜いクリーチャーどもを倒していった。
多少の宝と妖精パーキーベルから聞いていた黄金のひしゃくを手に入れると、かつて仲間が散った居住区の深部へと再び向かっていった。
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<コンゴウ国 居住区深部・総力戦>
冒険者たちは、手薄な居住区深部の炊事場へと至り、太ったコックを倒すと、隣室にいる山賊たちへと襲い掛かった。彼らは”エンラージ(巨大化)”ポーションを飲んだ重装備のオークを盾役として、距離を取って攻撃してきた。思いの他に長引いた戦闘によって、スプリンタード・スカル族の首長ペルモラットと仲間のホブゴブリンたち、そして山賊の幹部の一人イリアナも合流してしまう。
ゴブリンたちは弱兵だが数で勝る。戦いに長けたオークたちは、やや強引ではあるが無為無策の戦いはしない。重武装のオークたちがウズサロを足止めし、後方からは弓兵たちの弓とソーサラーであるペルモラットの巧みな黒魔術が飛んでくる。用心深いイリアナは、オークが倒れるまで遠隔攻撃で相手を弱らせる作戦だ。しかし血に飢えた魔剣レンダーは、イリアナをそそのかして前衛で戦わせようとしていた。
ゴブリンは生産活動を知らない。彼らの人生は生き残るための自分勝手な都合による略奪だ。オークの人生は戦争そのものである。相手を殺すことのみを学び、戦傷が勲章なのだ。ホブゴブリンをゴブリンの一種と考えてはいけない。ゴブリンが1mほどの身長で、わちゃわちゃ煩いだけなのに対し、ほぼ人間と変わらぬ身長で、武具を完璧に使いこなし、戦術すら考えて実行する。足手まといとなった者は容赦なく間引きされるが、ペルモラットのように魔術の才を発揮し、腕力以外で生き残れる者もいる。
街の噂によると、北方の蛮族たちの慰み者だったイリアナは、ある日主人の生殖器を食いちぎって殺害し、追われるように部族を逃げ出した。無慈悲な荒野で生き残ることを決意した彼女は、自分のためにどんな事でもやってきた。経緯は不明だが、同じ無法者としてバラックに出会った彼女は、やがて右腕として、そして情婦として知られていくようになる。
思わぬ総力戦に突入した冒険者たちには、何度も不利な局面が訪れた。しかし個々の力で勝っていた!ウズサロが戦線を維持し、ナイロが遊撃隊として敵の虚をつき、アノーリオンが全体を支え、ザックの魔法がこれまと同じく戦況を好転させた。彼らは見事に死線を潜り抜け、辛くも勝利したのだった!!
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<居住区の開放>
大きな勢力となったバラックたちは、TRINITYという協力者を得たことで、コンゴウ国を新たな拠点にしようとしているのだ。彼らはネイロス要塞が陥落したことを知らないが、バラックたちが深部を攻略している間、イリアナに居住区を占拠させ、いずれ要塞の仲間たちを呼び寄せるつもりだった。
ならず者たちに衛生の観念は期待できないものの、多くの略奪品が運び込まれており、生活用具だけでなく食料もあった。カシワイ谷の集落のものと合わせれば、ドワーフたちが厳しい自然にさらされながら生きなくても済むだろう。
だが、安心はできない!まだ何も解決していないのだ。ゴブリンの巣がそうであったように、孵化したレッド・ワームたちがいつ地面を食い破って襲ってくるか分からないのだ。
コンゴウ国の復興のためにも、パルムフェンスの危機を払うためにも、フィルスネイカーを倒さねばならない。冒険者たちは束の間の休息の後、まだ未探索の地域へと足を進めた。冒険は終わっていないのだ!!