DnD5e「腐敗の影」第二回
■参加キャラクター
(1)アグン :ヒューマン、男、ローグ
(2)“独り狩る者”ヴェル・カラギアノ :ゴライアス、男、ファイター
(3)ウォレン・ダブルロック :ディープ・ノーム、男、ウィザード
(4)ルチェ・ソワーレ :ヒューマン、男、クレリック[アモーネイター]
■前回まで
港町ヴェラダインの「海王の角笛」亭で出会った異色の冒険者たちは、コーウェン氏の依頼を引き受け、彼の行商の護衛として、開拓町ファンダリンへと向かった。
その道中でネズミの大群に襲われたが、何とか荷物(チーズや肉類)の全壊は防いだ。日が沈みかけた頃、冒険者たちはファンダリンに到着した。
■ストーンヒルの宿屋
コーウェン氏のチーズは大盛況で、いつもより豪華な食事にありつけた町人たちは、誰もが舌鼓を打っている。冒険者たちが晩餐を過ごしていると……宿屋の亭主トブレン・ストーンヒルが、ハーフエルフの老人を連れてやってきた。ネズミ退治の話を聞いて、この老人が冒険者たちに頼みたいことがあるという。
老人は「ダラン・エダーマス」と名乗った。彼はひとかどの人物のようで、見事な銀の長髪と深いシワ、そして歴戦の証たる戦傷が見えた。彼はエールで赤らんだ顔に、人当たりのよい笑顔を浮かべながら話す。
「実は、トブレンから君たちの話を聞きましてな。なんでもネズミ退治の名人だとか。
実は一週間ほど前から町の付近にネズミたちが湧くようでしてな……うちも果樹園を荒らされて困っておるのです。それだけならまだしも、彼奴らが何か悪い物でも運んできたのか、町の連中に体調を崩すものが増えてきております。」
「みなさま方の腕を見込んで相談なのですが、どうか原因を探ってくれないだろうか?もちろんタダとは言いません。もしネズミの問題を解決してくれたなら、私とトブレンから20gpを報酬として支払わせていただきます。」
コーウェン氏も、町の住人と友好的な関係が築けることは、商売としてもありがたいと、承諾してくれたことで、冒険者たちはダラン老人の依頼を受けることにした。
トブレン・ストーンヒル ダラン・エダーマス
■情報収集
すでに外は暗くなっており、ほとんどの棟が戸を閉め切っている。しかし幸いなことに、この宿には晩飯とアルコールを求めて、幾人かの町人が集まっている。冒険者たちは、まずこの宿にいる人たちから話を聞き始めた。
カウンターに座り、宿主の妻トリレン・ストーンヒルと話しているのは、30代のヒューマンの女性だ。彼女は近づきがたい人相をしているが、今はとても上機嫌のようで、机をたたき、大きな声で笑いながらトリレンと話しをしている。
しかし見知らぬ冒険者たちが近づくと、値踏みするようにジロジロと見つめた後、彼らの武具の扱い方について、あれやこれやと嫌味を言い始めた。
彼女はリネン・グレイウィンド。ヤーターの町から派遣されてきた“獅子盾商会”のファンダリン支部長をしている女性だ。キツイ性格の毒舌家ではあるが、以外にも人情家であり、町の女性たちと非常に仲が良い。また大変な情報通でもあるようだ。
冒険者たちは彼女から、今この宿にいる人たちについて教えてもらえた。
リネン・グレイウィンド
店の隅に座っている若いドワーフの男性は、鉱夫のスノーリ・リンドリアームだ。若く自信にあふれる彼は、ゴライアスのヴェルに腕相撲の勝負を挑んできた!鉱山で鍛えられたドワーフも、7000ヤード(約6400m)を越える過酷な山脈で生きてきた巨人族の亜種には敵わなかった。
素直に負けを認めたスノーリは、町の北にある丘陵地帯の中でも、モロの丘と呼ばれる地域で生木や動物の死骸を猛烈にネズミがかじったような跡を目にするようになったと教えてくれた。
スノーリ・リンドリアーム
カウンターの隅には二人の人物がいた。落ち込んだ様子で質素な食事をとっている農夫がタージ・ビート。その隣で彼を励ましている金髪の若いムーン・エルフの女性がシスター・ガラエルだ。彼女は町の広場にある“幸運の社”でタイモーラ神に仕えるクレリックである。
タージは町の北で穀物を作っている農夫だが、冒険者たちが話しかけても「放っておいてくれ」とふさぎ込んでしまう。隣の美しいエルフが代わりに事情を説明してくれた。どうやらネズミが出るようになってから、彼の最愛の息子が病で寝込んでしまっているらしい。ただの農夫が家にいても、かえって看病の邪魔になってしまい、息子のために何もできない自分を責めているらしい。幸いにも息子はガラエルの治療で快方に向かっているようだ。
冒険者たちは彼らからもネズミ退治をお願いされ、ガラエルから耐毒薬を貰った。
タージ・ビート シスター・ガラエル
次に誰に話しかけようかと思っていた所に、新しい客が来た。町の東を流れるテオミナ川で漁をしている熟練の老人だ。名をダン・ギョームという。なんと彼は従順なオオカミを連れている。住人たちは慣れているようで、テーブルの下で大人しく伏せているオオカミに文句をいう者はいない。
新鮮な魚を町に卸したばかりのダンに酒をおごると、彼は饒舌に話し始めた。
テオミナ川は町の南から東を通って、北へと流れていて、いくつかの支流に分かれている。その支流は洞窟に繋がっていることも多く、ある日彼は、とある丘の洞窟に大量のネズミが出入りしているのを見たことがあるという。どこの丘なのか忘れていたが、冒険者がモロの丘の名を出すと、彼は確かにモロの丘だったことを思い出した。
しかし川の周辺で仕事をする漁師や木こりたちは、そのあたりには岩肌そっくりのウロコを持つ人食いモンスターがいることを知っている。そのクリーチャーは夜行性であり、漁師たちは陽が落ちる前に仕事を終わらせることにしているのだ。
ダン・ギョーム
冒険者たちは最後に、大きめのテーブルについている4人組の冒険者グループに話かけた。彼らはファンダリン周辺でゴブリンなどのモンスターを狩っている一団だった。
多少は腕に覚えがある先輩冒険者たちから、岩肌のような保護色のクリーチャーがトログロダイトであることを教わった。
ケリー・アイン(23歳) ヒューマン/男性/ファイター2
フリッツ・ブラウンフェルツ(20歳) ヒューマン/男性/ファイター2
リアドリン(250歳) ハイ・エルフ/女性/ウィザード2
ライル・アンダーランド ハーフリング/男性/ローグ2
※彼らはファンデルヴァーの失われた鉱山 第1話「ゴブリンの矢」で使用したキャラクターたちです。
■モロの丘へ
住人たちの話をまとめると、病気の原因であるネズミたちは、町の北にあるモロの丘の洞窟からやってきているらしいことが分かった。
冒険者たちは、スノーリの飼っているジャイアント・ウィーゼル(大イタチ)を借り、またダンと狼のルーインにもついてきてもらうことにした。
翌朝、万全の準備をして洞窟へと向かうのであった。
■モロの丘の洞窟
モロの丘は野生動物の住処であるが、ダンの案内と幸運の女神タイモーラの加護か、特に危険はなく二時間ほどで着いた。そして道なき道を踏み歩き、ついに洞窟の入り口を探し当てた。
天然の洞窟の入り口は、陽の光がうっすらと周辺を照らしているが、数m先は真っ暗で何も見えない。空気がひんやりしており、奥から水の落ちる音が響いていて、大きな声を出さないと話ができそうにない。
洞窟は高さも広さも不揃いだ。壁面は凸凹しているが、磨かれたようにテカテカしている。ヒューマンサイズのクリーチャーでは気づかないような穴や通路に、危険な生物が潜んでいることがよくあるという。
■トログロダイトの巣
冒険者たちは激しい水音が反響する洞窟内を、松明を照らしながら慎重に進んでいく。やがて分かれ道を右に進むと、明らかに外から持ってきたと思われる瓦礫や木片などが散乱する広間に出た。
毒がある生物を警戒していたクレリックのルチェが“ディテクト・ポイズン(毒探知)”の呪文を発動し、岩壁に潜んでいたトログロダイトたちを見つけ出した!!
グループの盾役でもあるゴライアスの戦士ヴェルが、不快な匂いを撒き散らすクリーチャーを引き付けている間に、魔法使いたちの神秘の炎がトカゲのような醜怪な生物にとどめを刺した。
■滝の広場
洞窟の先は、岩の裂け目からゴウゴウと水が落ちる滝の広場になっていた。冒険者たちはここでも潜んでいるクリーチャーを先んじて発見することに成功した。低くなっている天井には、4フィート(約1.2m)ほどもあるクモが逆さにぶら下がっていた。また洞窟の壁面には、クモを恐れているのかジャイアント・ラットが窪みに潜んでいた。
ダンの相棒であるウルフのルーインが巨大ネズミを威嚇している隙に、冒険者たちは天井を逆さに歩いてくるクモたちと応戦した。アグンの剣閃によってクモの胴部に深手を負わせ、ウォレンによって万物に込められた“織”が破壊の炎となって襲いかかった。
冒険者たちはまたも洞窟の危機を乗り越えたのだった。