パルムフェンス キャンペーン

D&D3.5 オリジナルキャンペーン資料

第8話「Thunder Delve Mountain Retry (雷鳴山再び)」Vol.3【コンゴウ国・水晶の洞窟】

■前回までの冒険
 冒険者たちは100年間誰も(シュウですら)果たせなかった偉業の数々をこなし、コンゴウ国を根城にしようとしていた山賊団を次々と破り、国を解放していった。さらに宝剣ムネチカを探し出してグローナ姫を復活させたばかりか、継承者の石を起動させて王国復興をより確かなものとした。続く探索では、グローナ姫の戴冠に必要な王冠を完成させるに留まらず、王国滅亡の原因すらも明らかにした。
 英雄たちの冒険はついに最後の区域に迫ろうとしていた。コンゴウ国最深部「水晶の洞窟」だ。悪の根源であるバラックたちとTRINITYとの決着をつけねばならない!また水の精霊シャルサイダーを開放し、雷鳴山の大噴火を止めるためにフィルスネイカーを倒すのだ!!
 成功すればドワーフの歴史に刻まれるであろう大冒険がいよいよ始まろうとしている。

■参加キャラクター
(1) アノーリオン     :半エルフ、男、クレリック4(ラサンダー) / ファイター4
(2) ウズサロ       :半オーク、男、バーバリアン6 / フレンジード・バーサーカー2
(3) ”魔弾の” ザック    :ノーム、男、ウィザード8
(4) ナイロ        :エルフ、男、ローグ6 / レンジャー3
(5)フィル・オニキス   :エア・ジェナシ、女、スワッシュバックラー5 / デュエリスト2
(6)ゼムシエル      :ハウンド・アルコン、男、来訪者6 / レンジャー2

■冒険ログ
<崇拝の間>
グレート・ホールの東側は、コンゴウ国の秘密の場所「水晶の洞窟」へ続く下り坂になっており、この先は王国の中でも限られた者しか入ることが許されなかった場所だ。グローナ姫によって封印された扉が開かれ、冒険者たちはいよいよ最深部へと足を進めた。
そこはかつて装飾された小広間で、雄大な雷鳴山のパノラマが描かれていた。遥かワコクよりこの地に辿りついたドワーフの祖先たちが、雷鳴山を神より与えられた天恵の地と見定め、山そのものをも崇拝していた様子が伺える。その瓦礫の中に真新しい傷だらけのオークを見つけた。
情報を得るためにオークを治療したアノールは、”カーガルグ”と名乗るそのオークから水晶の洞窟の現状を聞き出せた。コンゴウ国の居住区に住み着いたTRINITYとバラックたちは、やがてゴーレムの間を走り抜けて水晶の洞窟へ向かった。探索の後についにハーヴェイオンの炉を見つけたバラックたちだったが、そこで巨大なヘビのようなクリーチャーと遭遇。かなわぬ相手と止む無く撤退したが、そこでTRINITYたちが裏切り戦闘となった。しばらくこう着状態が続いていたが、少し前に再び戦火が開かれカーガルグはそこで重症を負い、ここまで逃げてきたらしい。
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バラックたちのキャンプ地>
崇拝の間を抜けると、そこはキラキラとむき出しの水晶が光る天然の洞窟だった。
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TRINITYとバラックたち。敵同士が争いあう状況にあって、各個撃破を試みた冒険者たちは、まずバラックたちがキャンプを張る洞窟へと進んだ。TRINITYを警戒しているバラックたちは道中に魔法の罠を仕掛けており、ナイルが爆炎に包まれた。魔法探知のワンドを起動させながら慎重に進むと、侵入者探知”アラーム”の魔法を発見した。
バラックたちが近いことを悟った冒険者たちは、魔法の防護を発動させてから挑んだが、アラームの魔法で敵の接近を知ったバラックたちも同じだった。扉を開けた途端に魔法の罠が発動し、さらに待ち構えていたオークの攻撃と魔法で作り出された炎の壁が立ちはだかる。初手で深手を負ったウズサロが発狂するも、オークと炎の壁に阻まれて進めず、同士討ちを恐れて仲間たちも進撃できない。消極性は後手に回り、相手の有利となる。冒険者たちはただでさえ格上の相手に、不利な状況で戦わざるを得なくなった。
戦いに長けたバラックたちは炎の壁をうまく利用しており、傷だらけのウズサロに何度も危機が訪れる。危険を冒して治療に向かったアノーリオンによってかろうじて命を繋いでおり、戦況は遠隔魔法の応酬で支えられていた。遠隔攻撃魔法では”魔弾の射手”と恐れられるザックに分があり、ついに敵オーク、そしてバラックまでもが倒された!敵陣に一気に攻め込んだウズサロだったが、クレリックのバーナルに深手を負わせたものの、最後の悪あがきを見せたウィザードのゼモンによってついに絶命してしまう。仲間たちが仇を討ったものの、ウズサロが息を吹き返すことは無かった……。
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<ウズサロの死と天界からの使者>
勇敢なバーバリアンだったウズサロの魂は、肉体を離れ、時空を飛び越えて、”戦いの王”テンパス神のおわす「戦士の休息地」へと旅立っていった。それと入れ替わるように、物質界にはびこる悪を討つべく、天界から刺客が放たれたのだった……。
冒険者たちが、グローナ姫と同じ復活の奇跡に頼ろうとウズサロの死体を運んでいると、コンゴウ国の大広間で不思議な出会いをする。そこには手入れの行き届いた美しい白毛の猟犬が待っていた。物質界の生き物ではない。セレスチャル種の生物だ!驚いたことに犬は器用に口を動かして共通語を話した。
「ご苦労である。勇者たちよ。」
彼は警戒する冒険者たちに構わず歩み寄ると、今度は人型の形態をとった。彼の名はゼムシエル。天上界に住まうアルコン族の一種、天軍の兵士たるハウンド・アルコンであった。
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ゼムシエルは天界より悪を挫く英雄を助けるために派遣されたエージェントであり、悪を探し出して屠る猟犬であった。新たな仲間を加え、冒険者たちは探索を続ける。
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 <英雄の石棺>
冒険者たちは決戦が近いことを感じていた。しかしこれまでの冒険で深く傷ついており、ナイロは力を奪われており、フィルは視力を失っていた。満身創痍のままでの決戦は愚かな行為であり、彼らは戦力を上げるべく、探索途中の地区に希望を求めて戻っていった。
かつて探索したコンゴウ国の南東部は、王族や身分の高い者たちが住まう地区であった。その王族区で冒険者たちは英雄の眠る石棺を見つけたが、石棺を開ける謎が解けないままでいた。石棺の基部には、黄金で縁取られた太陽のマークが刻まれており、それを囲うように宝石が埋め込まれていた。
太陽に秘宝を求めよ!
それは夜のようで、空のようで、燃え盛るものである!
だが、それだけでは道は開かない。
まず、心を純粋にし、力のように集中させよ!
水のごとき冷静さも忘れるな!
臆病者は、炎で焼かれ、雷に打たれ、愚昧の内に死ぬであろう。
希望や幸運は当てにするな。
さすれば道は開かれよう。
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冒険者たちは試行錯誤の末に、石棺の謎を解き、正しい順序で宝石を押して副葬品と共に眠る英雄の遺体と対面した。彼らは財宝と魔法の品々を手にし、呪いを解くことにも成功した。
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<水の精シャルサイダー>
冒険者たちは、シャルサイダーの封印を解くため、バラックたちのいた噴水の洞窟に戻ってきた。
そこには波の模様で覆われた祭壇を備えた噴水が置かれている。かつては豊富な水を湛える泉だったようだが、今ではちょろちょろと水が滴り落ちるだけで、小さな水たまりがあるだけだった
冒険者たちが錆びた鉄を水の中に入れると、急に噴水の勢いが増し、みるみると泉に水が満ちていく。突然、天井から泉に向かって電撃が走り、水を青光りする燐光で照らした。すると水が盛り上がり、男の頭の姿をとった。
「我が名はシャルサイダー。我が瞑想を妨げたのは誰だ?」
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冒険者たちがサンダー・ストーンの返還を伝えると、彼は1000年の奉仕から解放されることを喜び、最後の契約としてフィルスネイカーを滅ぼし、噴火を抑えることを約束したのだった。
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溶鉱炉の間 ~最終決戦>
溶鉱炉の間へ続く扉は、雷鳴山が縁取られた分厚い鋼鉄製だった。冒険者たちはここが決戦の地であることを感じており、入念な準備の後に重い扉を苦労して開けた。二つの空間が繋がるや、赤い光とともに熱風が噴き出してきた。そこは灼熱の溶岩がうねる、荒いマグマの海だった!!熱気でゆがんた靄の下では、波がぶつかりあう度に溶岩のしぶきが飛び跳ねている。その一粒にでも触れれば大やけどをするだろう。
その死の赤い海の合間に石の橋がかかっており、その先には拝殿のような場所がある。ドワーフの主神モラディンの像に守られるように、溶鉱炉が設置されている。”ハーヴェイオンの炉”だ!!
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しかし炉の部屋には先客たちがいた。その中の一人には見覚えがある!かつてファブスター家の執事をしていた男。その正体は秘密結社TRINITYの幹部であるハンス・ヨーウィーだ!ハンスもまた思いがけない再会に驚いていた。いつも冷静な彼は状況を理解し、冒険者たちに停戦を提案した。
彼らの目的は炉心のマグマである。それを使ってマジック・アイテムを作り出したいだけなのだ。冒険者たちが邪魔をしなければ、マグマを手にし次第、コンゴウ国から立ち去る。しかも彼らが作るアイテムは、評議員フェルディナン・ファブスターを守るための物だと言うのだ。
いかにTRINITYがフェルディナンを守るために行動しているとはいえ、その先にあるのは邪悪な目的である。冒険者たちはハンスの要件を却下し、両者は戦う道を選んだ。

強靭な体力で盾役となって冒険者たちの進軍を防ぐ3人のグレイ・ドワーフ(ドゥエルガル)たち。後衛から強力な魔法攻撃を放つドライダー。幻術で冒険者たちを無力化させようとするハンス。彼らは確かに強敵であった。
しかし豊富な戦闘経験を持つ冒険者たちの戦いぶりは見事であった。アノーリオンは敵の注意を惹きつつ、戦況が崩れたらサポートに回れるように立ち回る。フィルは舞うように敵陣をすり抜け、彼女のレイピアが竜巻のような一撃を放って多くの敵を傷つけた。ナイロは戦況を読んで臨機応変に行動し、常に敵に自由を許さない。彼の前で下手な行動を取れば、隙を狙った必殺の一撃を喰らうだろう。ゼムシエルは天界の猟犬の名に恥じぬ働きぶりで、生来の魔法耐性を活かして、ついにハンスに致命傷を負わせた。パーティーの要であるザックは、ドライダーに弱体化させる呪いを与えたばかりか、得意の攻撃魔法を有効的に使ってこれまで通り冒険者たちを勝利に導いた。
油断できない戦いは、TRINITYを生け捕るには至らなかった。手を抜けば、こちらの被害も甚大だったろう。彼らはウズサロの死から多くを学んでいたのだ。結果的に、またしても真相は闇の中へと消えたのである。
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<水の精霊 vs 炎の魔獣>
冒険者たちとTRINITYの決着がついたが彼らに安息は許されなかった。マグマの洞窟が激しく揺れ、ひび割れた壁面から高温の蒸気が噴き出し、天井に吊り下がったツララ状の石が巨大な針となって、落ちては火の海に沈んでいった。泡立つ赤い海が盛り上がり、爆音とともにはじけた。どろどろした高熱のマグマを滴らせて巨大な柱のようなクリーチャーが頭をもたげたのだ!!
フィルスネイカーの母体。いずこかから現れ、ドワーフ王国を住処と決め、崩壊に導いた張本人だ。
冒険者たちは自らがすべきことを理解していた。ナイロが懐からサンダー・ストーンを取り出し、所有者の名を声高に叫んだ。
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「シャルサイダー!!」
起動コマンドに呼応して、約束された力が解放される。光点が石の中央に収束するやエメラルド色のエネルギーの放出によって宝石が砕け散り、大量の水が噴き出した!!地面に噴き出した大量の水は沈み込むことなくその場に溜まり、勇壮な咆哮とともにシャルサイダーが上体を起こす。驚異の出現と理解したのか、呼応するようにフィルスネイカーもまた雷のような怒号をあげた。
流れ落ちた水流が一瞬で蒸発して湯気となり、冷やされた溶岩が黒く濁っていく。まるで冷気に当てられたマグマが苦しんだかのように、ひときわ大きな噴火が起こる。それは戦いの合図だった。尖塔のような牙をむき出しにしてフィルスネイカーが突進し、シャルサイダーは肩越しにそれをかわすと、ガッシと胴体を掴んだ。そのまま太い胴体に腕を回して締め上げる。赤熱した岩石のような鱗に曝流のような水の身体がこすれ合うたびに、激しい水蒸気が発生した。シャルサイダーはそのまま絞め殺してやろうと腕に力を入れる、完全に抑え込まれているフィルスネイカーは必死にもがいたがビクともしなかった。早くも勝負あったかに思えたが、溶岩の中から突き出した巨木のような尾の一撃でシャルサイダーがひるむと、その隙にフィルスネイカーは拘束から抜け出した。お互いの実力が拮抗していることを知り、両者は互いに距離を取ってにらみ合う。
強大なクリーチャーたちは互いを傷つけあっていた。高水圧で形作られた半透明のシャルサイダーの身体には異物が浮かび、沸騰し始めているのか気泡のいくつかが沸き起こっている。超高熱で白く輝くほどだった溶岩のようなフィルスネイカーの鱗は冷やされて固まり、フジツボが張り付いた海底の遺物のように黒ずんでデコボコしている。
不気味な静寂の中、空間を満たしている殺気が最高潮に達する。フィルスネイカーが鎌首をもたげ、カパッと口を開けると喉の奥に力を込める。シャルサイダーは両手を相手に向けて精神を集中する。一瞬の溜めの後、フィルスネイカーが業炎を吐き出し、シャルサイダーの掌からは瀑布のような水流が発射された!!両者から発せられた逆ベクトルのエネルギーがぶつかり、爆音と振動と水蒸気、地面に沿って走る風圧であらゆるものが押し倒されていく。
互角な者同士の勝負の行方は、運が影響する。水の精霊が火口という環境にいるため、シャルサイダーはそこにいるだけで体力を削られていたのだ。みるみる火炎がシャルサイダーに迫っていき、まさに彼の身に届かんとしていた。その時だった。火口近くの壁面に亀裂が走っていく。音を立てて崩れた壁の割れ目から、大量の水が噴き出した!!雷鳴山の水を司るシャルサイダーは、戦いの合間に山の清水を少しずつここに集めていたのだ。
「間に合ったようだな。」
シャルサイダーが集めた地下水は、シャルサイダーを癒し、力の源となって彼の力を増大した。勝負所と決めたシャルサイダーは、雄たけびとともに全身全霊の力を込めて水流を放った。今にも届かんとしていた灼熱の炎が押し返され、大口を開けたフィルスネイカーの喉元に炸裂した!一点に集められた水圧は固い岩にも穴を穿つ。雪解け水がフィルスネイカーの高温の皮膚を急激に冷やし、固まった皮膚にひびが入る。超高圧の水流がフィルスネイカーを岩壁に叩きつけ、それでも勢いを止めず、脆くなった皮膚を千切り、肉を突き破った。頭を潰されたフィルスネイカーは、力なく岩壁に沿うように滑り落ちて溶岩の中に沈んだ。シャルサイダーの勝利だ!!

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<静かなる王国>
水の精霊シャルサイダーによって、フィルスネイカーの母体は倒された。急激に冷やされた鱗は赤黒く変色し、もうもうと蒸気を発している。もはやそれはピクリとも動かない。

最後の務めを果たしたシャルサイダーは、解放者たる冒険者たちに短く礼を言うと、その身体は渦を巻く巨大な水の柱となる。やがて水柱は根元から地面に広がるように沈んでいく。シャルサイダーが水界への扉を開き、数千年の帰途についたのだ。

溶岩の魔獣によって侵された王国は、再び石の静けさを取り戻したのだ。

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<エピローグ~救国の英雄~>
ドワーフは陽気で、歌と酒と宴会騒ぎの大好きな種族だ。その反面、頑固で誇り高く、種族の友とは何百年も義理を欠かさないし、種族の敵とは何千年でも戦い続ける。そのドワーフが100年もの間、恥を晒し続けてきた。彼らは積年の思いをついに果たしたのだ。

しかしまだ問題は山積している。衰退した王国を復興させるために、各地に散った仲間たちを集めなければならない。フィルスネイカーの母体は倒したとは言え、孵化したフィルスネイカーたちはまだ王国内に潜んでいる。亡霊も徘徊しており、死者の命を吸い取ろうとしている。まだコンゴウ国の大部分は倒壊した瓦礫の中に埋もれている。

火山活動が収まっても雷鳴山は未だに唸り続けている……。

 

しかし困難よりも希望の方がはるかに大きかった。冒険者たちはドワーフたちのできる限りのもてなしを受け、来た時とは真逆だ。冒険者たちの活躍は永くコンゴ国史に刻まれるであろう。救国の英雄たちによって、100年間の不遇を強いられたゴールド・ドワーフたちは救われたのだ!!