パルムフェンス キャンペーン

D&D3.5 オリジナルキャンペーン資料

ファンデルヴァーの失われた鉱山 第1話「ゴブリンの矢」

※本シナリオはDungeons&Dragons第5版 スターター・セット付属シナリオを、パルムフェンス地方でプレイできるように改編したものです。
■冒険の背景
500年以上も昔、ドワーフとノームの諸氏族は、”ファンデルヴァー協定”という協定を結んだ。この協定により、彼らは”波音(なみおと)の洞窟”の名で知られる不思議な洞窟内の豊富な鉱脈を共有することになったのである。鉱脈に富むだけでなく、この鉱山には偉大なる魔法の力があった。ヒューマンの呪文使いたちはドワーフやノームたちと手を結び、魔法のエネルギーを巨大な鍛冶場”呪文の鍛冶場”に流し込み、結びつけた。そこでは魔法の品々を作りだすことができたのだった。この古き良き時代には、近隣のヒューマンの街ファンダリンも同様に栄えていた。しかし災難がやってきた。オークどもがパルムフェンス中を荒らし回り、行く先々を略奪しつくしたのだ。
オークどもの強力な軍勢は、邪悪な魔道士たちを金で雇ってさらに力を強め、波音の洞窟を襲ってその富と魔法の宝物を奪おうとした。ヒューマンの魔道士たちもドワーフやノームの仲間と共に”呪文の鍛冶場”を守るべく戦い、結果として起こった魔法の激突により洞窟の大半は破壊された。ほとんどの者が地震や落盤で命を落とし、波音の洞窟の場所は分からなくなってしまった。
 
■参加キャラクター
(1) フリッツ・ブライアンフェルツ:ヒューマン、男、ファイター1
(2) ケリー・アイン       :ヒューマン、男、ファイター1 
(3) ライル・アンダーランド   :ハーフリング、男、ローグ1
(4) リアドリン         :ハイ・エルフ、男、ウィザード1
 
 ■冒険ログ
<ヴェラダインにて>
それぞの夢を追う若き冒険者たちは、パルムフェンス地方随一の大都市ヴェラダインにて、グンドレン・ロックシーカーという名のドワーフから依頼を受ける。開拓地のファンダリンにある”バーセンのよろず屋”まで無事に荷車を運んできて欲しいとの事だ。報酬は一人10gp。彼自身はシルダー・ホールウィンターという名の戦士とともに先にファンダリンまで向かっている。
依頼者のドワーフはとても気さくで人が良さそうな人物である。ただ彼はとても興奮しており、彼と彼の兄弟は何か大きな発見をしたようなのだ。『自慢したいが詳しく話せない』もどかしさを隠せていない。冒険者ギルドお墨付きの依頼主なので信用できそうだ。冒険者たちはそれぞれの理由で依頼を受け、荷物を受け取り、雄牛の引く荷馬車でグンドレンとシルダーの後を追った。
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<ゴブリンの待ち伏せ
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冒険者たちがヴェラダインを出立して数日経ち、安全な街道を外れて無法の開拓地へと向かう。共に過ごす中で冒険者たちはすっかり意気投合していた。二頭の雄牛が引く荷馬車はさらに細い道へと入る。もはやここは文明に守られた地ではない。山賊や追いはぎが横行し、それらから守ってくれる者はない。
ファンダリンへ向かう小道に指しかかった時、前方に二頭の馬の死体が転がって道を塞いでいるのが見えた。遠目だが黒い矢羽根が突き刺さっているのが分かった。ゴブリンたちが好んで使う矢だ!そこは藪の茂った小高い丘に囲まれた隘路で、待ち伏せに最適の場所だった。
馬車を置いて慎重に進んだ冒険者たちは、案の定ゴブリンの待ち伏せに遭ってしまう。駆け出しの冒険者とはいえ、数匹のゴブリン程度が彼らの相手になろうはずもなく、比較的容易に倒されてしまう。それどころか一匹を生け捕りにした冒険者たちは、その”ゲラ”というゴブリンを先導させて彼らの巣へと向かった。冒険者たちが見つけた馬こそ、先に出立したグンドレンとシルダーの乗っていた馬だったからだ!!
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<ギザ牙族の隠れ家・入り口>
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捕虜にしたゲラに先導させてグンドレンとシルダーが連れ去られた洞窟へと向かう冒険者たち。途中に罠が仕掛けられていたが、ゲラの協力(?)で無事に避けて通った。そこは小川の流れ出る洞窟で、ギザ族はここを拠点の一つとして追いはぎ行為を行っているようだ。元来弱い生物であるゴブリンは群れを作って生活し、周辺の村々を襲うことがある。しかし彼らは徒党を組んで罠を仕掛け、待ち伏せし、人間の旅人を襲って連れ去った。彼らを率いるリーダーがいるのだ!!ゲラによれば、ギザ族は強大な勢力を持つ大部族のようだった。彼らはここから数10マイルも離れた廃城を拠点として各地に広がっている。部族を率いているのは”グロール王”を名乗るバグベアで、この洞窟のリーダーもまた”クラーグ”という名のバグベアらしい。
驚くべきことに今回の襲撃は単なる野党行為ではなく、あらかじめ計画されたものだったのだ!数日前にクラーグの元にグロール王から伝令の使者が来て『グンドレン・ロックシーカーという名のドワーフが来ないか見張り、来たら彼と彼の持ち物をそっくりグロール王に届ける』という命令を受けた。どうやらギザ族に”黒蜘蛛”という人物やってきて金を払って依頼をしたらしい。彼らは命令どおりにグンドレンと彼の荷物をクラーグ王に届けたそうだ。仲間のヒューマンは洞窟西側の食堂に閉じ込めているらしい。
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<ギザ牙族の隠れ家・犬舎>
見張りのゴブリンはすっかり油断しており、あっという間に倒されてしまった。洞窟を入るとすぐに彼らの飼うウルフの巣があった。組織だったゴブリンは、鋭い嗅覚を生かすため、また番犬としてウルフを手なずけるのだ。鎖に繋がれた狼たちは侵入者に激しく吠え掛かるが、餌付けと<動物使い>で大人しくさせた。
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<ギザ牙族の隠れ家・橋>
洞窟を流れる小川に沿った道は険しい上り坂になっており、小川は水位こそ低いものの流れが激しくなっている。川の向こうに脇道が見えたが、冒険者たちはそのまま川沿いに進み、木とロープでできたボロボロの橋が25ft(約7.6m)ほど高い所にかかっている所にきた。橋の上には無警戒のゴブリンの見張りがいた。ずる賢いゴブリンたちは小川の先にダムを作っており、侵入者を発見したら仲間に知らせてダムを崩し、そのまま押し流す手はずだった。射撃の名手であるケリーが見事にヘッドショットを決め、冒険者たちはクラーグのいる方へと向かった。
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<ギザ牙族の隠れ家・溜め池の洞窟>
険しい坂道を登ると、滝の轟音が洞窟内に響いていた。そこはゴブリンによって堰き止められたダムのある大きな空洞で、三匹のゴブリンが退屈しのぎにふざけあっていた。突然の侵入者の出現で驚いているゴブリンに冒険者たちは攻撃を仕掛ける。三体のうち一体は容易に倒したが、一匹はあらかじめそう命じられていたのか、奥の部屋へ逃げ込んでクラーグに知らせに行った。残る1体に意外な苦戦を強いられたまま、冒険者たちは奥の部屋も警戒する。
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<ギザ牙族の隠れ家・クラーグの洞窟>
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洞窟の深部もまた広い天然洞窟になっており、中央には石炭を燃やす焚き火があり、部屋の隅には略奪品が山と積まれていた。しかし明かりで照らしてもバグベアらしき姿は見えなかった。先ほど知らせに向かったゴブリンらしき影が岩陰に隠れる様子が見てとれた事から、洞窟のどこかに隠れ、不意打ちを狙っているようだ。
パーティーの盾である戦士フリッツがゴブリンに手間取っている間、後衛のケリー、ローグのライルがバグベアたちの相手をすることになってしまった。リアドリンはもう強力な魔法の発動は不可能だった。クラーグはペットの狼を突撃させ、ジャヴェリンを投げてくる。荷物の影に隠れて遮蔽を得たゴブリンたちの矢も脅威だ。狼の牙で傷つけられたライルを、ジャヴェリンを投げきったクラーグのモーニングスターが襲う!やっと戦線に復帰したフリッツが次々と敵を倒していくが、バグベアの《蛮力》を発揮させた強力な一撃を受けてライルが吹っ飛び、意識を失ってしまった。それでも冒険者たちはゴブリンを率いるクラーグを倒し、急いでライルを治療するのだった。ゴブリンたちが盗んだ荷物の中にキュア・ポーションがあったことが幸いした。彼らはよく働いていたようで、銅貨や銀貨も見つかった。荷物の中にはファンダリンの獅子盾商会の印章が入った物もあり、これを届ければ見返りが期待できるだろう。
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<ギザ牙族の隠れ家・ゴブリンのねぐら>
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ゴブリンを率いる者は倒したが、事件はまだ解決していない。グンドレンがどこに連れ去られたのかは不明だが、彼の連れであるシルダー・ホールウィンターはこの洞窟に囚われたままだ。冒険者たちは橋を渡ってひどい匂いのするゴブリンの洞窟を進んだ。西側の奥はゴブリンたちのねぐらになっており、数体のゴブリンがギャーギャー騒いでいた。ねぐらの奥は10ft(約3m)ほどの崖になっており、そこにやや体格のよいゴブリンと拷問されて傷だらけのシルダーがいた。
冒険者たちはゴブリン数体を倒すが、その勢いに押されたゴブリンがシルダーを人質にした交渉をしてきた。金貨10枚と引き換えにシルダーを渡すと言うのだ。お互いを信じられない中で、冒険者たちは撤退を装って隠れ、隙を突く作戦を立てた。しかし隠れ場所が悪かったのか、急に人数が減ったことを不信に思ったのか、ゴブリンたちに小細工がバレ、シルダーが刺されてしまう。狭い通路での戦いは長引き、シルダーの命がどんどん流れ出ていく。それでも何とかゴブリンを倒し、残っていたキュア・ポーションで彼の命を救った。

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<シルダー・ホールウィンター>

救出したシルダーは50歳近いヒューマンで、ヴェラダインの騎兵隊の名誉ある地位にある人だった。また彼はヴェラダイン周辺の治安を守り、仕える領主に名誉と栄光をもたらす『Federation of Dominions(領主連盟)』の活動員でもあった。シルダーは彼の仲間の魔法使いイアルノ・アルブレックが、およそ二ヶ月前にファンダリンに組織の支部を建設するため向かったが、そのまま行方不明になっており、ちょうど探しに行こうとしていた所でグンドレンと出会ったのだ。ドワーフに同行して、仲間の捜索と再開拓地の手伝いや治安維持に尽力しようとしていたのだ。

グンドレン・ロックシーカーは思っていたよりも重要な人物だった。ロックシーカー三兄弟(グンドレン、タルデン、ヌンドロ)は伝説の『波音の洞窟』の入り口を見つけ出した(※冒険の背景参照)。グンドレンはその入り口を記した地図を持ち歩いており、いつか鉱山を再開発して魔法の炉を見つけ出そうとしていた。ギザ族のグロール王は”黒蜘蛛”なる謎の人物と取引し、グンドレンと地図を彼らの居城へと連れ去ってしまった。

波音の洞窟に眠る”呪文の鍛冶場”が悪の手に渡れば、彼らは強大な魔法のアーティファクトを生み出し、もはや誰も手出しできない力を手に入れてしまうだろう。悪の勢力を倒し、さらわれたグンドレンを救出するため、ギザ族の城を探し出さねばならない。このパルムフェンスの新たなる脅威を取り除くべく冒険者達の活躍はまだまだ続く。

 

第8話「Thunder Delve Mountain Retry (雷鳴山再び)」Vol.3【コンゴウ国・水晶の洞窟】

■前回までの冒険
 冒険者たちは100年間誰も(シュウですら)果たせなかった偉業の数々をこなし、コンゴウ国を根城にしようとしていた山賊団を次々と破り、国を解放していった。さらに宝剣ムネチカを探し出してグローナ姫を復活させたばかりか、継承者の石を起動させて王国復興をより確かなものとした。続く探索では、グローナ姫の戴冠に必要な王冠を完成させるに留まらず、王国滅亡の原因すらも明らかにした。
 英雄たちの冒険はついに最後の区域に迫ろうとしていた。コンゴウ国最深部「水晶の洞窟」だ。悪の根源であるバラックたちとTRINITYとの決着をつけねばならない!また水の精霊シャルサイダーを開放し、雷鳴山の大噴火を止めるためにフィルスネイカーを倒すのだ!!
 成功すればドワーフの歴史に刻まれるであろう大冒険がいよいよ始まろうとしている。

■参加キャラクター
(1) アノーリオン     :半エルフ、男、クレリック4(ラサンダー) / ファイター4
(2) ウズサロ       :半オーク、男、バーバリアン6 / フレンジード・バーサーカー2
(3) ”魔弾の” ザック    :ノーム、男、ウィザード8
(4) ナイロ        :エルフ、男、ローグ6 / レンジャー3
(5)フィル・オニキス   :エア・ジェナシ、女、スワッシュバックラー5 / デュエリスト2
(6)ゼムシエル      :ハウンド・アルコン、男、来訪者6 / レンジャー2

■冒険ログ
<崇拝の間>
グレート・ホールの東側は、コンゴウ国の秘密の場所「水晶の洞窟」へ続く下り坂になっており、この先は王国の中でも限られた者しか入ることが許されなかった場所だ。グローナ姫によって封印された扉が開かれ、冒険者たちはいよいよ最深部へと足を進めた。
そこはかつて装飾された小広間で、雄大な雷鳴山のパノラマが描かれていた。遥かワコクよりこの地に辿りついたドワーフの祖先たちが、雷鳴山を神より与えられた天恵の地と見定め、山そのものをも崇拝していた様子が伺える。その瓦礫の中に真新しい傷だらけのオークを見つけた。
情報を得るためにオークを治療したアノールは、”カーガルグ”と名乗るそのオークから水晶の洞窟の現状を聞き出せた。コンゴウ国の居住区に住み着いたTRINITYとバラックたちは、やがてゴーレムの間を走り抜けて水晶の洞窟へ向かった。探索の後についにハーヴェイオンの炉を見つけたバラックたちだったが、そこで巨大なヘビのようなクリーチャーと遭遇。かなわぬ相手と止む無く撤退したが、そこでTRINITYたちが裏切り戦闘となった。しばらくこう着状態が続いていたが、少し前に再び戦火が開かれカーガルグはそこで重症を負い、ここまで逃げてきたらしい。
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バラックたちのキャンプ地>
崇拝の間を抜けると、そこはキラキラとむき出しの水晶が光る天然の洞窟だった。
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TRINITYとバラックたち。敵同士が争いあう状況にあって、各個撃破を試みた冒険者たちは、まずバラックたちがキャンプを張る洞窟へと進んだ。TRINITYを警戒しているバラックたちは道中に魔法の罠を仕掛けており、ナイルが爆炎に包まれた。魔法探知のワンドを起動させながら慎重に進むと、侵入者探知”アラーム”の魔法を発見した。
バラックたちが近いことを悟った冒険者たちは、魔法の防護を発動させてから挑んだが、アラームの魔法で敵の接近を知ったバラックたちも同じだった。扉を開けた途端に魔法の罠が発動し、さらに待ち構えていたオークの攻撃と魔法で作り出された炎の壁が立ちはだかる。初手で深手を負ったウズサロが発狂するも、オークと炎の壁に阻まれて進めず、同士討ちを恐れて仲間たちも進撃できない。消極性は後手に回り、相手の有利となる。冒険者たちはただでさえ格上の相手に、不利な状況で戦わざるを得なくなった。
戦いに長けたバラックたちは炎の壁をうまく利用しており、傷だらけのウズサロに何度も危機が訪れる。危険を冒して治療に向かったアノーリオンによってかろうじて命を繋いでおり、戦況は遠隔魔法の応酬で支えられていた。遠隔攻撃魔法では”魔弾の射手”と恐れられるザックに分があり、ついに敵オーク、そしてバラックまでもが倒された!敵陣に一気に攻め込んだウズサロだったが、クレリックのバーナルに深手を負わせたものの、最後の悪あがきを見せたウィザードのゼモンによってついに絶命してしまう。仲間たちが仇を討ったものの、ウズサロが息を吹き返すことは無かった……。
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<ウズサロの死と天界からの使者>
勇敢なバーバリアンだったウズサロの魂は、肉体を離れ、時空を飛び越えて、”戦いの王”テンパス神のおわす「戦士の休息地」へと旅立っていった。それと入れ替わるように、物質界にはびこる悪を討つべく、天界から刺客が放たれたのだった……。
冒険者たちが、グローナ姫と同じ復活の奇跡に頼ろうとウズサロの死体を運んでいると、コンゴウ国の大広間で不思議な出会いをする。そこには手入れの行き届いた美しい白毛の猟犬が待っていた。物質界の生き物ではない。セレスチャル種の生物だ!驚いたことに犬は器用に口を動かして共通語を話した。
「ご苦労である。勇者たちよ。」
彼は警戒する冒険者たちに構わず歩み寄ると、今度は人型の形態をとった。彼の名はゼムシエル。天上界に住まうアルコン族の一種、天軍の兵士たるハウンド・アルコンであった。
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ゼムシエルは天界より悪を挫く英雄を助けるために派遣されたエージェントであり、悪を探し出して屠る猟犬であった。新たな仲間を加え、冒険者たちは探索を続ける。
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 <英雄の石棺>
冒険者たちは決戦が近いことを感じていた。しかしこれまでの冒険で深く傷ついており、ナイロは力を奪われており、フィルは視力を失っていた。満身創痍のままでの決戦は愚かな行為であり、彼らは戦力を上げるべく、探索途中の地区に希望を求めて戻っていった。
かつて探索したコンゴウ国の南東部は、王族や身分の高い者たちが住まう地区であった。その王族区で冒険者たちは英雄の眠る石棺を見つけたが、石棺を開ける謎が解けないままでいた。石棺の基部には、黄金で縁取られた太陽のマークが刻まれており、それを囲うように宝石が埋め込まれていた。
太陽に秘宝を求めよ!
それは夜のようで、空のようで、燃え盛るものである!
だが、それだけでは道は開かない。
まず、心を純粋にし、力のように集中させよ!
水のごとき冷静さも忘れるな!
臆病者は、炎で焼かれ、雷に打たれ、愚昧の内に死ぬであろう。
希望や幸運は当てにするな。
さすれば道は開かれよう。
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冒険者たちは試行錯誤の末に、石棺の謎を解き、正しい順序で宝石を押して副葬品と共に眠る英雄の遺体と対面した。彼らは財宝と魔法の品々を手にし、呪いを解くことにも成功した。
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<水の精シャルサイダー>
冒険者たちは、シャルサイダーの封印を解くため、バラックたちのいた噴水の洞窟に戻ってきた。
そこには波の模様で覆われた祭壇を備えた噴水が置かれている。かつては豊富な水を湛える泉だったようだが、今ではちょろちょろと水が滴り落ちるだけで、小さな水たまりがあるだけだった
冒険者たちが錆びた鉄を水の中に入れると、急に噴水の勢いが増し、みるみると泉に水が満ちていく。突然、天井から泉に向かって電撃が走り、水を青光りする燐光で照らした。すると水が盛り上がり、男の頭の姿をとった。
「我が名はシャルサイダー。我が瞑想を妨げたのは誰だ?」
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冒険者たちがサンダー・ストーンの返還を伝えると、彼は1000年の奉仕から解放されることを喜び、最後の契約としてフィルスネイカーを滅ぼし、噴火を抑えることを約束したのだった。
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溶鉱炉の間 ~最終決戦>
溶鉱炉の間へ続く扉は、雷鳴山が縁取られた分厚い鋼鉄製だった。冒険者たちはここが決戦の地であることを感じており、入念な準備の後に重い扉を苦労して開けた。二つの空間が繋がるや、赤い光とともに熱風が噴き出してきた。そこは灼熱の溶岩がうねる、荒いマグマの海だった!!熱気でゆがんた靄の下では、波がぶつかりあう度に溶岩のしぶきが飛び跳ねている。その一粒にでも触れれば大やけどをするだろう。
その死の赤い海の合間に石の橋がかかっており、その先には拝殿のような場所がある。ドワーフの主神モラディンの像に守られるように、溶鉱炉が設置されている。”ハーヴェイオンの炉”だ!!
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しかし炉の部屋には先客たちがいた。その中の一人には見覚えがある!かつてファブスター家の執事をしていた男。その正体は秘密結社TRINITYの幹部であるハンス・ヨーウィーだ!ハンスもまた思いがけない再会に驚いていた。いつも冷静な彼は状況を理解し、冒険者たちに停戦を提案した。
彼らの目的は炉心のマグマである。それを使ってマジック・アイテムを作り出したいだけなのだ。冒険者たちが邪魔をしなければ、マグマを手にし次第、コンゴウ国から立ち去る。しかも彼らが作るアイテムは、評議員フェルディナン・ファブスターを守るための物だと言うのだ。
いかにTRINITYがフェルディナンを守るために行動しているとはいえ、その先にあるのは邪悪な目的である。冒険者たちはハンスの要件を却下し、両者は戦う道を選んだ。

強靭な体力で盾役となって冒険者たちの進軍を防ぐ3人のグレイ・ドワーフ(ドゥエルガル)たち。後衛から強力な魔法攻撃を放つドライダー。幻術で冒険者たちを無力化させようとするハンス。彼らは確かに強敵であった。
しかし豊富な戦闘経験を持つ冒険者たちの戦いぶりは見事であった。アノーリオンは敵の注意を惹きつつ、戦況が崩れたらサポートに回れるように立ち回る。フィルは舞うように敵陣をすり抜け、彼女のレイピアが竜巻のような一撃を放って多くの敵を傷つけた。ナイロは戦況を読んで臨機応変に行動し、常に敵に自由を許さない。彼の前で下手な行動を取れば、隙を狙った必殺の一撃を喰らうだろう。ゼムシエルは天界の猟犬の名に恥じぬ働きぶりで、生来の魔法耐性を活かして、ついにハンスに致命傷を負わせた。パーティーの要であるザックは、ドライダーに弱体化させる呪いを与えたばかりか、得意の攻撃魔法を有効的に使ってこれまで通り冒険者たちを勝利に導いた。
油断できない戦いは、TRINITYを生け捕るには至らなかった。手を抜けば、こちらの被害も甚大だったろう。彼らはウズサロの死から多くを学んでいたのだ。結果的に、またしても真相は闇の中へと消えたのである。
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<水の精霊 vs 炎の魔獣>
冒険者たちとTRINITYの決着がついたが彼らに安息は許されなかった。マグマの洞窟が激しく揺れ、ひび割れた壁面から高温の蒸気が噴き出し、天井に吊り下がったツララ状の石が巨大な針となって、落ちては火の海に沈んでいった。泡立つ赤い海が盛り上がり、爆音とともにはじけた。どろどろした高熱のマグマを滴らせて巨大な柱のようなクリーチャーが頭をもたげたのだ!!
フィルスネイカーの母体。いずこかから現れ、ドワーフ王国を住処と決め、崩壊に導いた張本人だ。
冒険者たちは自らがすべきことを理解していた。ナイロが懐からサンダー・ストーンを取り出し、所有者の名を声高に叫んだ。
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「シャルサイダー!!」
起動コマンドに呼応して、約束された力が解放される。光点が石の中央に収束するやエメラルド色のエネルギーの放出によって宝石が砕け散り、大量の水が噴き出した!!地面に噴き出した大量の水は沈み込むことなくその場に溜まり、勇壮な咆哮とともにシャルサイダーが上体を起こす。驚異の出現と理解したのか、呼応するようにフィルスネイカーもまた雷のような怒号をあげた。
流れ落ちた水流が一瞬で蒸発して湯気となり、冷やされた溶岩が黒く濁っていく。まるで冷気に当てられたマグマが苦しんだかのように、ひときわ大きな噴火が起こる。それは戦いの合図だった。尖塔のような牙をむき出しにしてフィルスネイカーが突進し、シャルサイダーは肩越しにそれをかわすと、ガッシと胴体を掴んだ。そのまま太い胴体に腕を回して締め上げる。赤熱した岩石のような鱗に曝流のような水の身体がこすれ合うたびに、激しい水蒸気が発生した。シャルサイダーはそのまま絞め殺してやろうと腕に力を入れる、完全に抑え込まれているフィルスネイカーは必死にもがいたがビクともしなかった。早くも勝負あったかに思えたが、溶岩の中から突き出した巨木のような尾の一撃でシャルサイダーがひるむと、その隙にフィルスネイカーは拘束から抜け出した。お互いの実力が拮抗していることを知り、両者は互いに距離を取ってにらみ合う。
強大なクリーチャーたちは互いを傷つけあっていた。高水圧で形作られた半透明のシャルサイダーの身体には異物が浮かび、沸騰し始めているのか気泡のいくつかが沸き起こっている。超高熱で白く輝くほどだった溶岩のようなフィルスネイカーの鱗は冷やされて固まり、フジツボが張り付いた海底の遺物のように黒ずんでデコボコしている。
不気味な静寂の中、空間を満たしている殺気が最高潮に達する。フィルスネイカーが鎌首をもたげ、カパッと口を開けると喉の奥に力を込める。シャルサイダーは両手を相手に向けて精神を集中する。一瞬の溜めの後、フィルスネイカーが業炎を吐き出し、シャルサイダーの掌からは瀑布のような水流が発射された!!両者から発せられた逆ベクトルのエネルギーがぶつかり、爆音と振動と水蒸気、地面に沿って走る風圧であらゆるものが押し倒されていく。
互角な者同士の勝負の行方は、運が影響する。水の精霊が火口という環境にいるため、シャルサイダーはそこにいるだけで体力を削られていたのだ。みるみる火炎がシャルサイダーに迫っていき、まさに彼の身に届かんとしていた。その時だった。火口近くの壁面に亀裂が走っていく。音を立てて崩れた壁の割れ目から、大量の水が噴き出した!!雷鳴山の水を司るシャルサイダーは、戦いの合間に山の清水を少しずつここに集めていたのだ。
「間に合ったようだな。」
シャルサイダーが集めた地下水は、シャルサイダーを癒し、力の源となって彼の力を増大した。勝負所と決めたシャルサイダーは、雄たけびとともに全身全霊の力を込めて水流を放った。今にも届かんとしていた灼熱の炎が押し返され、大口を開けたフィルスネイカーの喉元に炸裂した!一点に集められた水圧は固い岩にも穴を穿つ。雪解け水がフィルスネイカーの高温の皮膚を急激に冷やし、固まった皮膚にひびが入る。超高圧の水流がフィルスネイカーを岩壁に叩きつけ、それでも勢いを止めず、脆くなった皮膚を千切り、肉を突き破った。頭を潰されたフィルスネイカーは、力なく岩壁に沿うように滑り落ちて溶岩の中に沈んだ。シャルサイダーの勝利だ!!

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<静かなる王国>
水の精霊シャルサイダーによって、フィルスネイカーの母体は倒された。急激に冷やされた鱗は赤黒く変色し、もうもうと蒸気を発している。もはやそれはピクリとも動かない。

最後の務めを果たしたシャルサイダーは、解放者たる冒険者たちに短く礼を言うと、その身体は渦を巻く巨大な水の柱となる。やがて水柱は根元から地面に広がるように沈んでいく。シャルサイダーが水界への扉を開き、数千年の帰途についたのだ。

溶岩の魔獣によって侵された王国は、再び石の静けさを取り戻したのだ。

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<エピローグ~救国の英雄~>
ドワーフは陽気で、歌と酒と宴会騒ぎの大好きな種族だ。その反面、頑固で誇り高く、種族の友とは何百年も義理を欠かさないし、種族の敵とは何千年でも戦い続ける。そのドワーフが100年もの間、恥を晒し続けてきた。彼らは積年の思いをついに果たしたのだ。

しかしまだ問題は山積している。衰退した王国を復興させるために、各地に散った仲間たちを集めなければならない。フィルスネイカーの母体は倒したとは言え、孵化したフィルスネイカーたちはまだ王国内に潜んでいる。亡霊も徘徊しており、死者の命を吸い取ろうとしている。まだコンゴウ国の大部分は倒壊した瓦礫の中に埋もれている。

火山活動が収まっても雷鳴山は未だに唸り続けている……。

 

しかし困難よりも希望の方がはるかに大きかった。冒険者たちはドワーフたちのできる限りのもてなしを受け、来た時とは真逆だ。冒険者たちの活躍は永くコンゴ国史に刻まれるであろう。救国の英雄たちによって、100年間の不遇を強いられたゴールド・ドワーフたちは救われたのだ!!

 

レイス

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レイスは怨念や妄執から発生したアンデッドである。
高い知性を持つが、意思のほぼ全てが生ある者への恨みである。レイスの身体は物質界と霊界の狭間に存在しているため、物理攻撃のほとんどが何の効果もない。またレイスは致命的な接触を持つので、近距離で戦闘を行うのは危険である。

 

レイス 中型サイズのアンデッド(非実体) <宗教15>
脅威度:6、[常に秩序にして悪]、共通語、地獄語
HD:6d12、hp38
イニシア:+7、速度60ft(12マス)/飛行(良好)
AC15 (+3敏、+2反発)
接触15 / 立ちすくみ12、基本攻撃+3、組み付き―
近接攻撃+6 (1d4、非実体の接触)および1d6【耐】吸収
全力攻撃+6 (1d4、非実体の接触)および1d6【耐】吸収
接敵面/間合い:5ft / 5ft、SV頑健:1 / 反応:4 / 意志:6
筋‐,16+3,‐,14+2,14+2,15+2
・【耐久力】吸収(超常):頑健SV15、1回毎に5点一時的hp
・同属作り(超常):1d4R後にレイス化
《暗視60ft》《アンデッドの種族特徴》《異様なオーラ》《退散抵抗+2》《太陽光による無力化》《非実体の副種別特徴》
<威圧+10><隠れ身+11><聞き耳+12><交渉+6><視認+12><真意看破+8><生存+2(痕跡を辿る+4)><捜索+10>

《イニシアチブ強化》《鋭敏感覚》《迎え討ち》《無視界戦闘》

《異様なオーラ》…野生・家畜を問わず動物は30ft以内にいるとレイスの異常な存在を感じるころができる。動物は自ら進んでレイスに近づくことはなく、無理やり近づけるならレイスがその場にいる限り<恐慌状態>になる。
<恐慌状態>…手に持っているものを全て落とし、恐怖の原因から最高速で逃げる。ランダムな経路をとり、途中の危険も全て避ける。SV・技能判定・能力値判定に-2ペナルティ。追いつめられると<戦慄状態>となり攻撃しない。戦闘では防御専念アクションを選択し、逃げる際は魔法などのあらゆる手段を用いて逃げる。
<戦慄状態>…恐怖に凍りつきアクションがとれない状態。AC-2とACに【敏】修正値を加えられない。
《迎え討ち》…【敏】修正値分の追加の機会攻撃回数を得る。
 
アンデッドの種族特徴

・[精神作用]効果((強制)、士気、(魅惑)、(紋様)、(惑乱)の各効果)への完全耐性。
・睡眠効果、[即死]効果、毒、病気、朦朧化への完全耐性。
・クリティカル・ヒット、生命力吸収、能力値吸収、非致傷ダメージ、疲労と過労の対象にならない。肉体系能力値(【筋/敏/耐】)へのダメージと疲労および過労への完全耐性。
・【知】を持たないアンデッドは自然治癒できない。インフリクト系呪文などの負のエネルギーは治癒する。
・頑健SVを要求する全ての効果に対する完全耐性。
・<精神集中>判定に【魅】修正値を用いる
・大規模ダメージで即死しないが、hpが0以下で即座に破壊される。
・呼吸せず、食事せず、睡眠もしない。

非実体の副種別
・魔法でない攻撃形態すべてに完全耐性。
・呪文や魔法の武器の命中を受けても50%の確率で無視できる(正のエネルギー、負のエネルギー、マジック・ミサイルのような[力場]効果、ゴースト・タッチ武器は例外)。
・聖水は作用するが、50%の確率で作用を与えられない。
・固体への侵入・通り抜けができるが、物体の外縁に隣接し続けなければならない(自分の接敵面より大きな物体を完全に通り抜けられない)。
・侵入中でも隣接するマス目にいるクリーチャーや物体を感知することができるが、敵は非実体クリーチャーに対して完全視認困難(50%の視認困難)を得る。
・もっと遠い場所を見たり、普通に攻撃するためには、物体から出る必要がある。物体の中にいれば完全遮蔽を得るが、物体の外の敵を攻撃するには通常の遮蔽のみ。(よって待機行動をすれば出現と同時に攻撃可能)
・[力場]効果を通りぬけられない。
・非実体クリーチャーの攻撃は、外皮・鎧・盾ボーナスを無視するが、反発ボーナスと[力場]効果(メイジ・アーマーなど)は通常通りに働く。
・空中と同じように水中でも行動できる。
・落下することもなければ、落下ダメージも受けない。
・足払いや組みつき攻撃を行えず、その対象にもならない。
・重量がなく、重量によって作動する罠を作動させない。
・音を立てず、自ら音を立てない限り<聞き耳>で聞きつけられない。
・視覚によらない感覚(鋭敏感覚や疑似視覚など)は効果がない。
・生来の方向感覚があり、見ることができなくても完全な移動速度。

 

第8話「Thunder Delve Mountain Retry (雷鳴山再び)」Vol.2【コンゴウ国・王族区】

■前回までの冒険
 滅びたドワーフの王国「コンゴウ」を狙って、バラックたち山賊団とTRINITYが手を組んだ。雷鳴山のマグマの中では、フィルスネイカーの卵が孵化し続けており、噴火と共にパルムフェンスに大被害を与えようとしている。予断を許さない状況の中で、冒険者たちはコンゴウ国を探索する。
 コンゴウ国の希望である宝剣ムネチカを探し出し、グローナ姫を復活させ、閉ざされた扉の先へと進むために!
 
■参加キャラクター
(1) アノーリオン     :半エルフ、男、クレリック4(ラサンダー) / ファイター3
(2) ウズサロ       :半オーク、男、バーバリアン6 / フレンジード・バーサーカー1
(3) ”魔弾の” ザック    :ノーム、男、ウィザード7
(4) ナイロ        :エルフ、男、ローグ5 / レンジャー2

■冒険ログ
<崩落した兵舎>
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居住区を開放した冒険者たちは、大通路を南へ渡って未探索の区域へと進んだ。そこは破壊の跡がすさまじく、床のほとんどが崩落しており、崖のはるか下では時折マグマの赤いうねりが見えていた。流れ込んだ地下水が沸騰した蒸気が霧のように充満していた。
冒険者たちは、かろうじて崩落した先の通路へと渡った。そこは狭く逃げ場のない通路であり、扉の近くでドワーフの遺骸が積み重なるように倒れていた。彼らは死しても箱を守っていたようだ。
貴重な品物には、それを守るための罠もある。その中でも魔法の罠は、検知の魔法か凄腕の盗賊にしか見つけられない。ドワーフたちが守っていた箱には呪いの罠がかかっており、不幸にもナイロはそれを発見できなかった。ナイロの生気が奪われ、ひどい脱力感に襲われる事になった。[ビストゥ・カースの呪文により筋力低下]
彼らが守っていたのは、奪われる前に持ち出したわずかな財産と未完成の王冠だった。戴冠用の王冠は見事な金細工が施されているが、特徴的な六角形の台座は空洞のままだった。
彼らが逃げ出してきた扉の先は狭い部屋になっていたが、ここに逃げ込み、死ぬまで過ごしていたドワーフは収容数を軽く超えていた。別の扉は厳重にバリケードが築かれ、その先にいた者の侵入をひどく恐れていたようだった。冒険者たちは意を決してバリケードの先へと進んだ。
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<崩れ落ちた空間 ~ムネチカ~>
バリケードの先にはいくつかの部屋があったようだが、壁も床もほとんどが崩れ落ちて崖になっており、一つの広い空間として繋がっていた。かつては武器庫や兵舎だったように思われる。何の幸運なのか、崩落を免れた床の一部が細い通路のようになっており、バランスをとりながら進めそうに見える。しかし部屋は蒸気によって白く煙っており、先の様子は分からない。
ふと、蒸気の先で何者かが動いたように見えた。目を凝らすとオークが狭い通路にいて、崖の先の何かを取ろうとしているようだった。霧の奥にも数体がいるようだった。彼らが求めているもの、それは見事な装飾がされた美しいカタナであった!!
バラックに従うスプリンタード・スカル族のディアー・ダックは、コンゴウ国を探索中に偶然、護国の宝剣ムネチカを発見したのだった。探索目的の一つである宝剣を奪い合う遭遇戦が始まった。
ディアー・ダックの仲間には、オークの神グルームシュに仕える邪神官ダウフルがおり、後衛のザックたちにも死の恐怖が迫る。前衛は今にも崩れそうな狭い通路に阻まれてうまく動けず、バランス取りに集中していると容赦なく矢弾が飛んでくる。状況に阻まれて後手に回ってしまった冒険者たちは、ここでも窮地に立たされてしまった。ザックの背中でそれを喜ぶレンダーの笑い声が響く。
またもザックのファイアー・ボールが状況を好転させ、冒険者たちは辛くも勝利を収めたものの、解決できない大きな課題に悩まされることになる。この残されたままの課題が、後に大きな不幸を生むことになる……。
冒険者たちは、邪悪な魔剣レンダーを深い谷の底に沈めると、代わりに目的の一つである護国の宝剣ムネチカを手に入れたのだった!!
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<グローナ姫の復活>
ムネチカは知性ある剣であり、コンゴウ国を復興させる鍵となる強力なアーティファクトだ。戦いの助けとなる能力の他、崩壊した建物を元の姿に戻す魔法も備わっている。そしてコンゴウ国のためになる事だけに限られるものの、<ウィッシュ>の魔法が使えるのだ!!。
冒険者たちは再びパーキーベルの泉に戻り、グローナ姫の遺骸を運び出した。カシワイ谷のドワーフたちも呼び出され、彼らがムネチカに恭しく頭を下げると、ムネチカはふがいないドワーフ一族に不満を述べるも、これこそ最善策であることに納得し、グローナ姫の復活を容認した。
ついに奇跡の時が訪れる。人智を超えた奇跡の魔法により、血の気を失っていた姫の肌が桃色に、暁のような髪が波打つようにたなびき、胸を上下させて生命の鼓動を刻んだ。一瞬まぶたがピクリと動くと、ゆっくりと瞳が開かれ、黄金色の双瞳が明らかになった。冒険者たちは完全に消えていた希望の光を取り戻したのだ。
ドワーフたちは表しようもない感謝を示し、冒険者たちを英雄として称えた。復活したグローナ姫によって、いよいよコンゴウ国の秘密を探る深部への扉が開かれようとしていた。
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<グレート・ホール>
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グローナ姫自らによって扉が開かれた。そこにはドワーフの栄光が隠されていた。”グレート・ホール”と呼ばれる巨大な空間は、巨人の腕でも届かないくらい太い幾本もの石柱で支えられ、松明の光すら届かない高さの天井には宝石が埋め込まれており、まるで満天の星空のように輝いていた。今では瓦礫と煤と骸骨だらけの大広間は「道場」とも呼ばれ、ある日には切磋琢磨するサムライたちで盛況を極めていたのだろう。
ひときわ目立つ装飾された中央の柱には、驚くほど巨大な未カットの宝石がはめ込まれ、虹色の光彩を放っていた。”継承者の石”だ!!失われたドワーフの英知の結晶とも伝えられる伝説的な宝石には、それを守るものもいるのだ。柱を支えるように掘り出されていた巨大なドワーフの英雄像が、埃をふるい落としながら動き出したのだ。かなわない相手と悟った冒険者は、動きの鈍いゴーレムの隙をついて別の扉へと進んだ。
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<図書館>
冒険者たちが逃げ込んだ先は、一般的なドワーフの住居であった。そのどれもが破壊されており、いくつかの通路は瓦礫によって完全に塞がれていた。そこにはかろうじて残った蔵書室があり、念入りの捜索によってゴーレムの停止コマンドを発見した。
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<継承者の石>
ゴーレムの脅威を取り除いた事によって、冒険者たちはコンゴウ国復興への希望の光を更に強固なものにした。継承者の石には、コンゴウ国に万が一が起こった時のためにあるものだ
試しに石に触れてみたザックは、拒否され弾き飛ばされてしまうが、刹那の間に栄光ある未来を見た。埃と煤だらけのコンゴウ国は補修され、磨かれ、金と銀の装飾がいくつもの松明や魔法の光によってまばゆく輝き、きれいな身なりのゴールド・ドワーフたちがそこかしこを笑顔で歩き回っていた。鍛錬に励むサムライたちがカタナを振るうたびに星粒のように光が煌いた。やがて黄金の髭のドワーフたちがうやうやしく畏まり、彼らが作る道を、王族の衣とマントをまとい、輝く王冠をいただいたグローナ姫が彼らの忠義に応えるようにゆっくりと歩いていく。その傍らにはサムライマスターとなったカグヤが王国の治安を守っている。
それは夢だった。継承者の石には莫大な魔法の力が宿っており、英知を授けると共にあるべき未来を垣間見せると言う。
冒険者たちは、本来の継承者であるグローナ姫を石に接触させた。グローナを受け入れた石は目を開けていられないほどの白光で広間を満たし、やがて元の暗い空間に戻った。石が真の継承者にどんなヴィジョンを見せたのかは分からないが、そこには全てを悟った王女がいた。
グローナに導かれるままに、次にカグヤも指先をそっと石に触れると穏やかなエネルギーが彼女の体を包んでいった。異国人の彼女はとうにコンゴウ国に身を捧げることを誓っていた。ここでサムライとしての修練を積み、奥義を極めようと覚悟していた。石は彼女の意志を汲み、穢れを祓ってライカンスローピィを治癒し、奥義の数々を授けたという。
王女として覚醒したグローナは、秘密の合言葉でゴーレムを崩すと、起動源となっていた力ある宝石を取り出した。雷鳴山の精髄と呼ばれ、シャルサイダーの力の根源ともいわれる”サンダー・ストーン”だ!グローナ姫は冒険者たちに石を渡すと、二つの新たなミッションを出した。
・シャルサイダーの開放
・王冠を完成させるための六角形の宝石の探索
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<王族区>

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冒険者たちはグレート・ホールを出立し、南方の王族区へと向かった。ディアー・ダックたちもこのルートを通ったようで、彼らの簡易キャンプやゴーレムや床を食い破って現れたレッド・ワームに倒されたオークの死体などがあった。魔法の研究室では、秘密の扉を発見して薬品を手に入れた。

王族区もまた破壊の痕がすさまじく、ほとんどが崩れ、焼け焦げ、手入れのされていない年月に蝕まれていた。大きく裂けた床が地下のマグマ層まで達し、そこで冒険者たちは灼熱の溶岩の中を悠然と泳ぐ、超巨大な蛇のようなクリーチャーを見た。それこそ災いの元凶フィルスネイカだった!また探索の中で英雄たちの墳墓を発見したが、罠を恐れて装飾品を漁ることは諦めた。

コンゴウ国の中でも身分の高い者たちが住んでいた区域は、埃とクモの巣だらけになってはいたが、かつての隆盛がどれほどのものだったのかを容易に想像させる造りだった。ここにも逃げ遅れた多くのドワーフたちのミイラがあった。そこには先代の王”黒兜”ロギム・マーブルフィスト公の遺骸もあった。彼は絶望の日々の中で自らの傲慢がもたらした悲劇を嘆き、後悔を日記に残していた。

そして冒険者たちはついに王の私室に辿り着いた。魔法感知を持たぬ者にすら感じられるほどの薄気味悪い部屋でレイスと対峙した冒険者たちは、生気を奪う冷たい手をかわし、非実体の身体に魔法のダメージを与えていく。壁や床を通り抜けて進み、生命を吸い取る怨霊との戦闘は慎重にならざるを得なかった。レイスに殺された者もまたレイスになるからだ!有効打であるザックの魔弾が炸裂し、負のエネルギーの塊はついに霧散した。

天蓋付きの大きなベッドには、両手を合わせて静かに眠るマリーナ王妃のミイラがあった。王妃の手には特徴的な六角形のダイヤモンドが握られていた。未完成の王冠のパーツだ。冒険者たちはコンゴウ国に新たな女王を誕生させることにも成功したのだ。

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<滅亡の秘密>

彼らの英雄的な働きに応えるようにマリーナ王妃のゴーストが現れ、コンゴウ国が滅んだ秘密を明かしてくれた。驚くべきことにコンゴウ国の滅亡にはTRINITYが関わっていたと言うのだ!巨人戦争の頃にTRINITYの創設者であるネッド・ファブスターは、ドワーフたちに悪魔を使役するマジック・アイテム”サークレット・オブ・デヴィルズソーン”を作らせた。彼はその力で悪魔召喚士として活躍し、ヴェラダインを勝利へと導いた。巨人族の王を相打ちで倒した父のような英雄に憧れていたロギムは密かに悪魔のサークレットをもう一つ作らせた。しかしそれは彼の思うように作動せず、最愛の妻マリーナ王妃に悪魔が憑依するという悲劇をもたらす。ムネチカの反対を押し切って発動させたウィッシュによって王妃は救われたが、次なるフィルスネイカーの襲撃の際、魔力を失っていたムネチカの助力を得られず、王国は滅亡したというのだ。
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<女王の誕生>

冒険者たちはついにグローナ姫を女王とする最後のパーツ、王冠を完成させた。それはコンゴウ国の復興を確実なものとするために絶対に必要なことであった。未完成の王冠はそのままでも値打ち物が、象徴的な宝石をいただくことで測れないほどの価値を生み出した。ドワーフたちの細工技術の高さが伺える。

生き残ったドワーフたちが諦めていた希望、100年間誰も見いだせなかった希望を次々と叶えていく冒険者たちは伝説的な英雄に並ぶほどだ。しかし彼らはまだ英雄その人ではない。コンゴウ国の最後の障害であるフィルスネイカー、そしてTRINITYとバラックたちを排斥せねばならない。英雄になるべく冒険者たちは秘密のの最深部・水晶の洞窟へと進んでいくのだった。

 

大ストーン・ゴーレム

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ゴーレムは、魔法使いによって製造される動く像である。
ゴーレムは造られる材料によって性能が大きく違う。コンゴウ国のゴーレムは花崗岩で造られており、白竜セルシュトリオンを倒した剣豪ライカを象っている。平時はコマンドを与えられず英雄像として祀られているが、非常時には起動して命令に従う。
フィルスネイカーの襲撃の際、大広間を守るために「この部屋に入ってくるドワーフ以外を殺せ」と命令され、100年間それを守り続けている。

※ディアー・ダックの仲間のオークの死因は、大広間を通った際にゴーレムに重傷を負わされた為である。

大ストーン・ゴーレム超大型サイズの人造 <神秘学24/32>
脅威度:16、[常に真なる中立]
HD:42d10+40、hp271
イニシア:-2、速度20ft(4マス)
AC27 (-2サイズ、-2敏、+21外皮)
接触6 / 立ちすくみ27、基本攻撃+6、組み付き27
近接攻撃+42 (4d6+13、叩きつけ)
全力攻撃+42 (4d6+13、叩きつけ)×2
接敵面 / 間合い:15ft / 15ft、SV頑健:14 / 反応:12 / 意志:14
37+13,敏7-2,-,-,判11+0,魅1-5
《暗視60ft》《魔法への完全耐性》《人造の種族特徴》《ダメージ減少10/アダマンティン》《夜目》
スロー(超常):2R/1回、フリーアクション、距離10ft、7R持続、意志SV31無効
1回の移動か標準アクションのみ,全Rアクション不可、AC/近接攻撃ロール/反応SV-1、移動速度半分
登場シナリオ:第8話


この超大型サイズの自動人形は、おそらく歴史上のドワーフの英雄を模ったもので、身長は約18ft(5.5m)にもおよび、体重はおよそ32000ポンド(15t)ほどもあるだろう。バカでかい花崗岩を削り出して作られた身体を持ち、一歩ごとに地面を振動させながら歩いてくる。

護国の宝剣ムネチカ

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形状:高品質な片手特殊武器(バスタード・ソード)
着用部位:片手、両手
サイズ:中型
使用法:単純使用型
チャージ数:-
効果:
知性あるアイテム、人造クリーチャー、自我値:31[秩序にして中立]
バスタード・ソード+2、”ウィルム”ベイン
知18(+4)、判18(+4)、魅10(+0)
共通語、エルフ語、ドワーフ語、ドラゴン語、テレパシー
《暗視60ft》、非視覚的感知、聴覚120ft(24マス)
<知識(神秘学)+14><交渉+14>
リード・マジック、デスウォッチ(常時)、グレーター・メンディング(特殊)
キュア・モデレット・ウーンズ:2d8+3、3回/日、ウィッシュ(特殊)
用途:コンゴウ国の守護、外敵の打倒/抹殺

 

※グレーター・メンディング(特殊)
変成術;1標準アクション;距離5ft;回数無制限
コンゴウ国内のあらゆる建造物を修理することができる。

※ウィッシュ(特殊)
ムネチカは、制限があり、またリスクも高いため、滅多に使わないが、ウィッシュを発動することができる。
【制限とリスク】
コンゴウ国内でのみ発動可能
・「コンゴウ国の守護」という目的を達せられる内容の願いのみ。
・発動後は3d10年間、魔法の発動能力を失う。

サンダー・ストーン (雷鳴山の石)

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エメラルド色に淡く輝く、縦8in(約20cm)、横幅6in(約15cm)、重さ2ポンド(0.9kg)ほどの宝石(ダチョウの卵くらいのサイズと重さ)。覗くと、稲妻のような光が中でほとばしっている。
雷鳴山の精髄とも言える宝石。かつての所有者はシャルサイダー。

コンゴウ国黎明期のドワーフ王が地底を探索中に発見。その後の探索でシャルサイダーと出会い、彼への返還を拒否してシャルサイダーの使役に成功した。以来、シャルサイダーは雷鳴山の噴火を抑える役割を担っている。ドワーフ王は英雄像に石を隠すとともに、ゴーレムの起動源とした。

オーラ強度:圧倒的
重量   :2ポンド
市価   : 最低500000gp(非売)
入手場所 :第八話、コンゴウ国・石像の体内